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タヌキぼーやの能・狂言を見に行こう


「松江城薪能」を見に行く[3]能「大社」

日時
2008(平成20)年09月21日(日)17:45頃開演(20:15頃終演)
会場
松江城 馬溜 特設舞台(松江城山公園/島根県松江市殿町1-5)
演目
仕舞「石見銀山(いわみぎんざん)」浦田保浩(シテ方観世流)
狂言「千鳥(ちどり)」茂山逸平(狂言方大蔵流)
能「大社(おおやしろ)」井上裕久(シテ方観世流)
公演情報
http://sanin-noh-kyogen.info/log/20080921.html

承前

火入れが終わるとお調べが始まって,いよいよ能「大社」.全国の神々が出雲に集う神在月(かみありづき/旧暦10月),出雲大社に参詣した臣下(福王知登)一行の前に,大社に使える老若ふたりの宮人(井上裕久,浦辺幸裕)が姿を見せ,出雲大社のいわれを語って消え入ります,替わって末社ノ神(茂山宗彦)が登場し,改めて大社の神のお告げを臣下に伝えると,輝く月のもと現れた十羅刹女(浅井道昭)が「天女舞」を,続いて大社の祭神・大己貴命[オオナムチノミコト=大国主命](井上裕久)が「楽」をそれぞれ舞い,さらには海底から龍神(吉田篤史)が出てきて小龍が入った黄金の箱を大己貴命に捧げる......という,「神在月」の神事に取材した曲にふさわしく,神々が次々と舞台に繰り出すにぎやかな脇能です.

囃子方と地謡4人が出た後,社の作り物が舞台に出るまでにずいぶん時間がかかりました.何があったのでしょう? 客席はさすがにダレた雰囲気になってしまいました.揚幕から登場したワキの臣下は実に晴れやかで気品に満ち,祝言を旨とする脇能の始まりに実に似つかわしいものでした.多くの能では,主人公であるシテより先にワキが舞台に登場し,シテが現れるべき舞台の空気を作っていくわけですが,その意味で本当によいワキの出を見たという気がしました.白い装束のシテの宮人の尉も,そこはかとく厳かなたたずまいを感じさせてくれました.

アイは,事前に読んでいた佐成謙太郎『謡曲大観』(第一巻,明治書院,1930初版)所収の詞章にあるような,参詣人が神主から大社のいわれを聞いた後,巫女の舞を見て楽しむといった多人数のものではなく,末社ノ神ひとりによるの語りと舞によるシンプルな構成.勤める茂山宗彦さんは,今や『ちりとてちん』の小草若ですっかり有名になりましたが,今回は神さまの役のために面をかけていたので,「底抜けに」の顔は拝めず,小草若ファンにはちと期待外れか(笑).千五郎家の孫世代のアイは初めて見ましたが,末社ノ神らしい,庶民的で親しみの持てる風情があって,これも今回のよい収穫でした.

後場は,何と言っても龍神の「舞働」の若々しさ,躍動感が光りました.この吉田篤史さんとアイの茂山宗彦さんは30代,ワキの福王知登さんに至ってはまだ20代なのだそうですが,「大社」はこういう若い世代が本当に見応えがありました.龍神に関しては,龍を掘った大きな立物を戴いた冠のインパクトも手伝ってか,橋懸に現れたときには客席からどよめきにも似たため息が漏れていました.

終演は20:15ごろ.当初の終演予定は19:45でしたから,実質45分遅れで始まって,30分遅れで終わったことになります.思いのほか順調に進んでいたものと見えます.ただ,開演の遅れの影響か,開演前の雨で体が冷えたためか,「大社」では年配者を中心に途中で席を立つお客さんが目立ちました.終演時も,シテとワキが退場するころから席を立つ人が多く,やや惜しい形での終演でした.

つづく



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