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タヌキぼーやの能・狂言を見に行こう


「松江城薪能」を見に行く[2]仕舞「石見銀山」,狂言「千鳥」

日時
2008(平成20)年09月21日(日)17:45頃開演(20:15頃終演)
会場
松江城 馬溜 特設舞台(松江城山公園/島根県松江市殿町1-5)
演目
仕舞「石見銀山(いわみぎんざん)」浦田保浩(シテ方観世流)
狂言「千鳥(ちどり)」茂山逸平(狂言方大蔵流)
能「大社(おおやしろ)」井上裕久(シテ方観世流)
公演情報
http://sanin-noh-kyogen.info/log/20080921.html

承前

仕舞「石見銀山」.昨年世界文化遺産に登録された石見銀山を舞台とする新作能(2006年初演)より.銀山を守る佐比売(さひめ)の神(浦田保浩)と銀の精(浦田保親)が現れ,銀山の繁栄を祝福するという,典型的な脇能に仕立てられた作品の後場部分の舞です.浦田保浩さんと浦田保親さんは,初演および昨年の大田公演で同曲の地頭とシテをそれぞれ勤めただけに,さすが堂に入ったもの.開演までのゴタゴタの後,脇能らしい晴れやかさで幾分はこちらの気持ちもやわらぎました,用いられた銀の作り物は,不定形の鏡のような板状で色は明るく,初演時と同じものと思われます.ちなみに大田公演では,三宝の上に黒光りする銀塊のようなものを載せていました.銀らしさという点では,大田公演の作り物の方が優れていたと思います.

舞そのものはよかったのですが,PAを通した地謡が,舞台とは異なる方向からしか聞こえなかったのには違和感を覚えました.私の席は,能楽堂で言えば脇正面に当たるエリアの,前から10列目程度の場所.額縁舞台で言えば上手寄りの席でした.本来は舞台から聞こえるべき音が,上手側のスピーカーを通して大音量で響いたのです.「万作・狂言十八選」の折もPAは通していたようでしたが,生の音をそっと下支えするような感じで,電気を通した大きな音の塊ではありませんでした.もっとも,「万作・狂言十八選」の会場は,街の雑踏を隔てる広い神苑の真ん中,今回の会場は,石垣の向こうに交通量の多い主要道が通るような場所でしたから,会場の条件の違いがPAの処理に反映されたのかも知れませんが,野外能を見た経験が乏しい私では,そのあたりの事情は正確にはわかりません.機会があれば,観能経験の豊富な方のお話も聞きたいところです.

狂言「千鳥」は,主人の使いの太郎冠者(茂山逸平)が,ツケのたまった酒屋(茂山七五三)から酒を手に入れようと一計をめぐらす話で,今回は親子の共演.茂山逸平さんは今年29歳ですが,お父さん譲りの長身にとぼけた味わいがにじみ出てきて,今後に期待したくなる太郎冠者ぶりでした.茂山千五郎家も,千作,千之丞さん兄弟の孫世代が20-30代を迎えて,地方でも孫世代のシテやオモアイを見る機会が,これからどんどん増えることになるでしょう.私にとっても同世代ゆえの親近感がありますから,これからの舞台も末永く見守りたいと思います.

狂言のあとは,薪能ならではの見せ場「火入れ式」.裃姿の松江市長と松江開府400年祭推進協議会会長が,薪に火を灯します.ただ,開演の遅れに伴って,狂言が始まる時点ですでに日が落ちていて,電気照明だけで舞台を明るくしている状況でしたから,遅きに失した火入れ式という感はぬぐいがたいものがありました.当初予定を入れ替えてでも,せめて狂言の前には火を入れた方がよかったです.舞台後方にそびえる黒い石垣が電気照明で照りかえるさまは決して悪くありませんでしたが,「薪能」というのに,本来は薪の補助であるはずの電気照明の存在が前に出てしまっては,情趣を損います.

つづく



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